「この歯は昔、神経を抜いたはずなのに、なぜまた痛いの?」
「10年以上前に治療した歯が、急に噛むと痛くなった」
「神経がない歯の歯ぐきが腫れて、ニキビのようなものができた」
このような症状で歯科医院を受診される方は珍しくありません。
患者さんからすると、**「神経を抜いた=もうその歯は痛くならない」**と思いますよね。
ところが、神経を取った歯でも、数年あるいは10年以上経ってから痛みや腫れが出ることがあります。
その原因の一つが、歯の根の中や根の先で起こる細菌感染です。
以前に根管治療を受けた歯で再び感染などの問題が起きた場合には、根の中をもう一度治療する**「再根管治療(さいこんかんちりょう)」**を検討することがあります。
この記事では、ホーチミンのありが歯科が、
なぜ神経がない歯が痛むのか?
歯ぐきが腫れるのはなぜか?
感染根管治療とは何か?
再根管治療では何をするのか?
治療すれば歯を残せるのか?
など、患者さんが特に気になるポイントを分かりやすく解説します。

そもそも「神経を抜いた歯」とは?
一般的に患者さんが「神経を抜いた」と呼んでいるのは、歯の内部にある**歯髄(しずい)**を取り除く治療です。
歯髄には神経だけでなく血管なども含まれています。
深い虫歯などによって歯髄に回復が期待できない炎症や感染が起きた場合、歯髄を取り除き、歯の根の中にある細い**根管(こんかん)**を清掃・消毒して封鎖する根管治療が必要になることがあります。
米国歯内療法学会(AAE)も、根管治療について、炎症または感染した歯髄を取り除き、歯の内部を清掃・消毒した後に充填・封鎖する治療と説明しています。
つまり、
「神経を抜くこと」だけが根管治療ではありません。
根の中の感染源を取り除き、できるだけ歯を保存することが重要な目的です。
神経を抜いたのに、なぜまた痛くなるの?
ここが患者さんにとって一番分かりにくいところです。
「神経がないなら痛みを感じないのでは?」
と思いますよね。
確かに、根管治療によって歯の内部の歯髄は取り除かれています。
しかし、歯の周りには神経を感じる組織が残っています。
歯の根の周囲には、歯根膜、歯ぐき、顎の骨などがあります。
根管内で感染が起こり、炎症が根の先から周囲の組織へ広がれば、
噛むと痛い、歯が浮いた感じがする、歯ぐきが腫れる
などの症状が現れることがあります。
つまり、
「神経を抜いた歯だから絶対に痛くならない」というわけではありません。
神経を抜いた歯が痛くなる主な原因
以前に根管治療を受けた歯が再び痛くなる原因はいくつかあります。
代表的なのが、根管内の感染や再感染です。
根管は非常に細く、単純な一本の直線ではありません。
歯によっては複数の根管があったり、途中で枝分かれしていたり、大きく曲がっていたりすることがあります。
AAEでは、最初の根管治療後に歯が治癒しない理由として、初回治療で処置されなかった狭い根管や曲がった根管、複雑な根管構造などを挙げています。また、新しい虫歯や、緩んだ・割れた詰め物やクラウン、歯の破折などから新たに感染する場合もあります。
つまり、
「昔の根管治療が悪かった」
と単純に判断できるわけではありません。
何年も問題なく使えていた歯でも、その後の虫歯や被せ物の劣化、歯の亀裂などによって新たな問題が起きることがあります。
「噛むと痛い」は根の先に炎症がある?
神経を取った歯でよくある症状の一つが、
「普段は何ともないけれど、その歯で噛むと痛い」
というものです。
根管内の感染などによって根の先の周囲に炎症が起きると、噛んだときに歯へ加わる力によって痛みを感じる場合があります。
患者さんによっては、
「歯が少し浮いている感じがする」
「硬いものを噛んだときだけ響く」
「指で押しても違和感がある」
と表現することもあります。
ただし、噛むと痛い=必ず根管感染とは限りません。
歯周病、噛み合わせ、歯の亀裂・破折などでも似た症状が出ることがあります。
そのため、症状だけで判断せず、診察やレントゲンなどによって原因を確認することが大切です。
歯ぐきにニキビのようなものができたら?
「神経を取った歯の上の歯ぐきに、小さなニキビみたいなものがあります」
という相談もあります。
根の先に慢性的な感染があると、膿の出口として歯ぐきに小さなできものができることがあります。
医学的には**サイナストラクト(瘻孔:ろうこう、フィステルとも呼ばれます)**などと呼ばれます。
特徴的なのは、強く痛まないこともあるという点です。
膿の出口ができることで圧力が逃げ、一時的に腫れや痛みが軽くなる場合があります。
そのため、
「潰したら治った」
「痛くないから大丈夫」
と判断しないでください。
歯ぐきのできものは、根の内部や周囲に問題があるサインの可能性があります。
急に歯ぐきが大きく腫れてきた場合は?
慢性的に進んでいた感染が急性化すると、
急に強く痛む、歯ぐきが腫れる、噛めない、顔まで腫れてくる
といった症状が現れることがあります。
特に、顔や顎の腫れが急速に広がる、発熱を伴う、飲み込みにくい、呼吸しにくいなどの症状がある場合は、通常の歯の痛みとして様子を見ず、速やかな医療評価が必要です。NHSも歯性感染に伴って呼吸困難や口腔内の大きな腫れなどがある場合には緊急対応が必要と案内しています。
「痛み止めを飲んで次の一時帰国まで待とう」
と長期間放置しないようにしましょう。
感染根管治療とは?
感染根管治療とは、細菌感染が起きた根管内部を清掃・消毒し、感染源をできるだけ取り除いていく治療です。
神経が壊死して感染した歯を初めて治療する場合もあります。
一方、過去に一度根管治療を受けた歯で、根管内に再び感染などの問題が起きた場合には、再根管治療が必要になることがあります。
この二つは患者さんにはどちらも、
「根の治療」
と説明されることが多いため、混同されやすいところです。
再根管治療とは?
再根管治療とは、以前に根管治療を受けた歯の根管をもう一度治療することです。
英語では「Endodontic Retreatment」と呼ばれます。
基本的には、以前に入れた根管充填材などを取り除き、根管内部をもう一度確認します。
そのうえで、根管を清掃し、感染源を取り除き、再度根管を充填・封鎖します。
AAEも再根管治療について、歯を再び開け、根管充填材を除去し、追加の根管や新たな感染がないか確認して、清掃・形成・再充填する流れを説明しています。
再根管治療は最初の根管治療より難しい?
症例によっては、初めて行う根管治療より複雑になることがあります。
なぜなら、すでに歯の中に根管充填材が入っていたり、土台や被せ物が装着されていたりするからです。
再治療するためには、それらを取り除く必要が生じる場合があります。
さらに、
根管が非常に細い、根管が石灰化している、根が大きく曲がっている、器具が根管内に残っている、歯に亀裂がある
など、さまざまな条件が関係します。
そのため、
「根の治療をもう一度やれば必ず治る」
とは言えません。
まず、その歯が再根管治療によって保存を目指せる状態なのかを判断することが重要です。
レントゲンやCTで何を見るの?
神経を取った歯が痛む場合、歯の外側だけを見ても原因が分からないことがあります。
そこで必要に応じてレントゲン撮影を行います。
レントゲンでは、
根の先の骨に変化がないか、以前の根管治療がどのような状態か、虫歯がないか
などを確認します。
症例によっては、歯科用CTによる三次元的な画像が診断に役立つこともあります。
特に、通常のレントゲンだけでは分かりにくい複雑な根管形態や根の周囲の状態などを確認したい場合に検討します。
ただし、根管治療を受ける患者さん全員にCTが必要というわけではありません。
診察や通常のレントゲン所見などをもとに必要性を判断します。
再根管治療をすれば必ず歯を残せる?
残念ながら、100%残せるとは言えません。
再根管治療によって保存を目指せる歯もありますが、歯の状態によっては別の治療方法を検討することがあります。
例えば、根の先への外科的な処置が選択肢になることもあります。
また、歯が深い位置まで割れている、虫歯によって残っている歯質が非常に少ない、歯周病が大きく進行しているなど、歯そのものを保存することが難しい場合には抜歯を検討することもあります。
大切なのは、
「根に膿がある=すぐ抜歯」
と決めることでも、
「絶対に再根管治療で残す」
と決めることでもありません。
その歯の状態を確認して、保存できる可能性や治療方法について考えることです。
痛くないなら放置してもいい?
ここも患者さんからよく聞かれます。
レントゲンを撮影した際に、
「根の先に影があります」
と言われても、本人にはまったく症状がないことがあります。
この場合、症状がないという理由だけで治療が不要とは判断できません。
一方で、レントゲンに影があるからといって、画像だけを見てすべて同じ治療になるわけでもありません。
以前の治療歴、現在の症状、画像の変化、歯の保存状態などを総合的に評価する必要があります。
「痛くないから放置」
「影があるから絶対に抜歯」
のどちらでもなく、まず診断を受けることが大切です。
抗生物質を飲めば根の感染は治る?
腫れたときに、
「抗生物質だけ飲めば治りますか?」
と聞かれることがあります。
抗菌薬が必要になるケースはありますが、根管内に感染源が残っている場合、薬を飲むだけで根管内部そのものの治療が完了するわけではありません。
ADAのガイドラインでも、多くの歯髄・根尖周囲の痛みや局所的な腫れについて、抗菌薬だけに頼るのではなく、根管治療や排膿など原因に対する歯科治療を優先することが示されています。発熱や全身倦怠感など全身への波及がみられる場合には抗菌薬が必要になることがあります。
以前処方された抗生物質を自己判断で飲むのではなく、歯科医院で診察を受けてください。
再根管治療の後は被せ物も重要です
根管内部を治療して終わりではありません。
根管治療を受けた歯では、虫歯や以前の治療によって歯質を大きく失っていることがあります。
そのため、根管治療後は残っている歯の量や歯の場所などを考慮して、適切に修復する必要があります。
また、せっかく根管内部を治療しても、歯の上部から再び細菌が入り込めば再感染につながる可能性があります。
AAEも、根管治療後の修復物による歯の保護と封鎖を治療の重要な工程として説明しています。
根の治療だけでなく、その後どのように歯を修復して長く使うかまで考えることが大切です。
日本で神経を取った歯がホーチミンで痛くなったら?
海外生活では、このパターンもあります。
「日本で10年前に神経を抜いた」
「昔の治療なので、どこの歯医者で治療したか覚えていない」
「日本へ帰国するまで数か月ある」
「出張中に突然腫れてきた」
こういった場合でも、まず現在の状態を確認することができます。
昔のレントゲンや治療記録がなくても、診察と必要な検査によって現在の状態を確認していきます。
もし日本の歯科医院からレントゲンデータや治療内容を取り寄せられるのであれば、参考になる場合があります。
特に痛みや腫れがある場合には、
「次の一時帰国まで我慢する」
と決める前に、一度診察を受けることをおすすめします。
神経を抜いた歯が痛いときのよくある質問
Q1. 神経を抜いた歯でも痛くなるのですか?
はい。歯の内部の歯髄を取り除いていても、歯根膜や歯ぐき、顎の骨など周囲の組織には感覚があります。根の先などに炎症が起きると、噛んだときの痛みや腫れを感じることがあります。
Q2. 10年前に神経を取った歯が突然痛くなることはありますか?
あります。長期間問題がなかった歯でも、新しい虫歯、被せ物からの細菌侵入、歯の亀裂などによって問題が起こることがあります。
Q3. 歯ぐきに白いニキビのようなものがあります。潰していいですか?
自分で繰り返し潰すことはおすすめしません。根の先の感染による膿の出口になっている可能性があるため、原因となっている歯を確認する必要があります。
Q4. 神経を取った歯が噛むと痛いのは根の病気ですか?
根の先の炎症が原因の場合がありますが、歯周病、噛み合わせ、歯の亀裂などでも噛んだときに痛むことがあります。診察や画像検査で原因を確認します。
Q5. 根の先に膿があると言われました。抜歯ですか?
必ず抜歯になるわけではありません。歯の状態によって感染根管治療や再根管治療などで保存を検討できる場合があります。一方、破折などによって保存が難しい場合もあります。
Q6. 再根管治療は何回くらいかかりますか?
根管の形、感染状態、以前の治療内容、被せ物や土台の状態などによって異なります。一律に「○回で終わる」とは言えません。
Q7. 抗生物質を飲んだら腫れが引きました。治ったということですか?
腫れや症状が改善しても、歯の内部に感染源が残っている可能性があります。症状がなくなったことだけで根管の問題が解決したとは判断できません。
Q8. 再根管治療をすれば必ず治りますか?
必ず治るとは限りません。根管の状態、歯の亀裂、残っている歯質、歯周組織の状態などによって治療結果は異なります。
Q9. 神経を取った歯が黒くなっています。根の感染が原因ですか?
神経を失った歯では色が変化することがありますが、変色だけで感染の有無を判断することはできません。見た目が気になる場合も、まず歯と根の状態を確認してから治療方法を検討します。
Q10. 日本で治療した歯でもホーチミンで診てもらえますか?
はい。過去に日本や他院で根管治療を受けた歯についても、現在の状態を確認して今後の治療について相談できます。以前のレントゲンや治療資料がある場合はお持ちください。
ホーチミンで「神経を抜いた歯がまた痛い・腫れる」方へ
神経を取った歯が再び痛くなると、
「神経を抜いたのに、治療が失敗したの?」
と不安になるかもしれません。
しかし、以前に根管治療をした歯が再び痛くなる原因は一つではありません。
根管内部の再感染、新しい虫歯、被せ物の問題、歯の亀裂、歯周組織の問題など、さまざまな可能性があります。
だからこそ、まず重要なのは、
「なぜ痛いのか」を確認することです。
ありが歯科では、ホーチミン在住の日本人の方についても、日本人歯科医師が日本語で症状を伺い、必要に応じてレントゲンや歯科用CTなどを使用して状態を確認します。
「神経を抜いた歯が噛むと痛い」
「歯ぐきが腫れている」
「歯ぐきにニキビのようなできものがある」
「昔治療した歯の根に膿があると言われた」
「再根管治療が必要と言われた」
「抜歯と言われたけれど、歯を残せる可能性があるか相談したい」
このような場合はご相談ください。
根管治療・再根管治療の目的は、単に根の中を何度も治療することではありません。
感染の原因を確認し、保存できる可能性がある歯をできるだけ残して、再び長く使える状態を目指すこと。
そのためには、根の状態だけではなく、歯そのものがどれだけ残っているか、歯に亀裂がないか、歯周組織はどうか、その後どのように修復するかまで含めて考えることが大切です。
※この記事は一般的な歯科情報を提供するものであり、個別の診断を行うものではありません。必要な治療方法や治療回数、歯を保存できる可能性は、症状・検査結果・歯の状態によって異なります。
「ありが歯科の各治療についてはこちらをご参考にしてみてください。」
執筆・監修歯科医 ありが歯科院長 有賀智哉
日本人歯科医師として、ホーチミン旧1区にて日本品質の歯科治療を提供。
一般歯科・小児矯正・インプラント・ホワイトニングまで幅広く対応しています。
日本語対応で安心してご相談いただけます。
関連記事


