ADC NEWS

「日本で神経を取った歯なのに、ホーチミンに来てから痛くなった」

「何年も問題なかった被せ物の歯が、急に噛むと痛い」

「神経がないはずなのに、なぜ痛みを感じるの?」

海外生活中に、以前日本で治療した歯に突然症状が出ると不安になると思います。

特に日本へすぐ帰国できない場合、

「帰国まで待って大丈夫?」
「ベトナムで治療していい?」
「被せ物を外さないといけない?」
「もう一度根管治療が必要?」

と迷う方も多いでしょう。

実は、神経を取った歯でも数年後に痛くなることはあります。

また、「以前治療した歯が痛い=前の治療が失敗していた」と単純に判断できるものでもありません。

治療後に新しい虫歯ができたり、被せ物や歯そのものに問題が生じたりすることもあるからです。

ホーチミン旧1区のありが歯科では、日本で治療した歯についても、現在の状態を確認したうえで治療が必要かを判断しています。

結論|神経を取った歯でも何年後かに痛くなることがあります

根管治療によって歯の内部の神経を取り除いていても、その歯の周囲には歯根膜・歯ぐき・骨などの組織が残っています。

そのため、根の先に炎症が起きたり、歯根膜に強い力が加わったり、歯が割れたりすると痛みを感じることがあります。

以前治療した歯が数か月〜数年後に痛くなる主な原因として、

・根の先の炎症・再感染
・以前の根管治療で処置されていない根管
・被せ物や詰め物からの細菌侵入
・新しくできた虫歯
・歯の亀裂・歯根破折
・噛み合わせや歯ぎしりによる負担

などが考えられます。

痛みだけで原因を特定することはできないため、レントゲンや口腔内診査などを行って現在の状態を確認することが重要です。

「神経を取った歯なのに痛い」のはなぜ?

患者さんから非常によく聞かれる質問です。

「神経を取ったのだから、もう痛みを感じないのでは?」

と思うのは自然です。

根管治療では、歯の内部にある歯髄を取り除き、根管内を清掃・消毒して封鎖します。

しかし、取り除くのは歯の内部の神経です。

歯の外側には、

歯根膜
歯槽骨
歯肉

などがあり、これらの組織には感覚があります。

例えば根の先に炎症が起こると、歯の内部の神経がなくても、周囲の歯根膜などを介して「噛むと痛い」「歯が浮いた感じがする」といった症状が出ることがあります。

つまり、

「神経がない歯=どんな問題が起きても痛くない」

というわけではありません。

日本で治療した歯が何年後かに痛くなる主な原因

1.根の先に炎症が起きている

代表的なのが、根の先の周囲に炎症が起こる根尖性歯周炎です。

根管内に細菌感染が残っていたり、後から細菌が侵入したりすると、根の先の周囲に炎症が起こることがあります。

症状としては、

・噛むと痛い
・歯を叩くと響く
・歯が浮いた感じがする
・歯ぐきが腫れる
・歯ぐきにできものができる

などがあります。

一方で、レントゲンでは根の先に病変が見えるものの、ほとんど症状がない場合もあります。

根管治療後にも根尖性歯周炎が残る原因として、根管内に残存する感染などが知られています。[1]

2.処置されていない根管が残っている

歯の根の中は、一本の単純な管になっているとは限りません。

非常に細い根管、曲がった根管、分岐した根管など、複雑な形態をしていることがあります。

特に奥歯では複数の根管が存在します。

以前の根管治療で見つけることが難しかった根管に感染が残っていると、治療後しばらくしてから根の先に炎症が生じることがあります。

ただし、これは必ずしも「以前の歯科医師が治療を間違えた」という意味ではありません。

根管形態には大きな個人差があり、非常に細い根管や複雑な形態は発見・処置が難しい場合があります。

3.被せ物・詰め物から細菌が入った

根管治療が適切に行われていても、その後の被せ物や詰め物の状態は長期予後に重要です。

年月が経過すると、

・被せ物が外れた
・被せ物に隙間ができた
・詰め物が欠けた
・セメントが劣化した
・被せ物の周囲から虫歯になった

などが起こることがあります。

その結果、細菌が内部へ侵入して根管内が再び感染することがあります。

根管治療後の歯では、根の治療だけではなく、最終的な被せ物や詰め物によって内部を封鎖することも重要です。

4.被せ物の下に新しい虫歯ができた

一度治療した歯は、二度と虫歯にならないわけではありません。

被せ物と天然歯の境目などから新しく虫歯が進行することがあります。

特に神経を取った歯では、歯の内部で虫歯が進行しても「冷たいものがしみる」といった歯髄由来の症状が出ないため、気づきにくいことがあります。

被せ物の下で虫歯が進行し、最終的に根管内へ細菌が侵入すれば、根の先に炎症が起こる可能性があります。

5.歯に亀裂が入っている・歯根が割れている

神経を取った歯で特に注意したい原因の一つが歯の亀裂や歯根破折です。

「普段は痛くないけれど、硬いものを噛んだ瞬間だけ痛い」

「噛んだとき、ある方向だけ痛い」

という症状では、クラックが関係していることがあります。

亀裂の位置や深さによって治療方法は大きく異なります。

また、歯根に縦方向の破折が生じた場合は、症状がはっきりしないまま周囲の骨や歯ぐきに炎症が起こることもあります。

6.噛み合わせ・歯ぎしり・食いしばり

すべての痛みが感染によるものとは限りません。

歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせによって特定の歯に強い力が加わると、歯の周囲にある歯根膜に負担がかかり、

「噛むと痛い」
「歯が浮いた感じがする」

といった症状が出ることがあります。

被せ物の歯だから痛いのではなく、その歯に加わっている力が原因の場合もあります。

そのため、レントゲンだけでなく噛み合わせなども確認することが重要です。

症状からある程度原因を予想できる?

症状だけで確定診断はできませんが、診断の手がかりにはなります。

症状考えられる原因の例
噛むと痛い根尖性歯周炎、クラック、咬合性外傷など
歯が浮いた感じ根の先の炎症、歯根膜への負担など
歯ぐきが腫れた根尖部の感染、歯周病など
歯ぐきにニキビのようなできもの根の先からの排膿路など
被せ物がグラグラする被せ物の脱離、虫歯、歯の破折など
硬いものを噛むと瞬間的に痛いクラックなど
痛みはないがレントゲンで影がある根尖性歯周炎など

「この症状なら必ずこの病気」という意味ではありません。

隣の歯から痛みを感じている場合などもあるため、口腔内診査や画像診断と合わせて判断します。

レントゲンを撮れば原因は全部分かる?

レントゲンは非常に重要ですが、1枚のレントゲンだけですべての原因が分かるわけではありません。

通常は、

・痛みが出る状況
・噛んだときの反応
・歯を叩いたときの反応
・歯ぐきの状態
・歯の動揺
・被せ物の状態
・歯周ポケット
・レントゲン

などを総合して判断します。

通常のデンタルX線だけでは原因が分かりにくい場合には、症例によって**歯科用CT(CBCT)**が診断に役立つことがあります。

特に複雑な根管形態、根尖部病変などを三次元的に確認したい場合に検討します。

ただし、すべての根管治療済みの歯にCT撮影が必要というわけではありません。

痛くなったら必ず根管治療をやり直す?

いいえ。

原因によって治療方法は異なります。

例えば噛み合わせが原因なら、根管治療をやり直す必要がない場合があります。

一方、根管内の感染が原因と考えられる場合には、再根管治療を検討します。

再根管治療では、以前の根管充填材などを除去し、根管内を再び清掃・消毒して封鎖します。

被せ物や土台が入っている場合には、それらを外す必要があることもあります。

また、通常の再根管治療だけでは対応が難しい症例では、歯根端切除術などの外科的歯内療法を検討する場合もあります。

重要なのは、

「痛いからすぐ抜歯」
「根の先に影があるから必ず抜歯」

と決めるのではなく、その歯を保存できる可能性を診断することです。

神経を抜いた歯がまた痛い・腫れるのはなぜ?

被せ物は必ず外さないといけない?

これも症例によります。

根管治療をやり直す場合でも、被せ物の種類・状態、内部の土台、虫歯の有無、治療する歯の状態などによって治療方法は異なります。

被せ物を残したままアクセスできるケースもありますが、被せ物の下に虫歯や漏洩が疑われる場合には、被せ物を外して内部を確認することがあります。

「被せ物を壊したくないから内部を確認しない」ことが必ずしも歯にとって最善とは限りません。

長期的にその歯を保存できる方法を考えることが重要です。

日本で治療した歯をベトナムで治療しても大丈夫?

日本で治療した歯だから、日本でしか再治療できないということはありません。

重要なのはどこの国で治療したかではなく、現在その歯に何が起きているのかを診断することです。

ありが歯科では、日本で治療した歯についても、

現在の症状
被せ物・詰め物の状態
根管治療の状態
歯根・周囲骨の状態
保存できる可能性

などを確認します。

そのうえで、

ホーチミンで治療を開始した方がよいのか
応急処置で対応できるのか
日本へ帰国してから治療してもよいのか

を症例ごとに考えます。

日本で歯科治療するのか?ホーチミンで歯科治療するのか?

日本へ帰国するまで待っても大丈夫?

これは症状によって大きく異なります。

早めの受診をおすすめする症状

・強い痛みが続く
・噛めないほど痛い
・歯ぐきが腫れている
・顔まで腫れてきた
・膿が出ている
・発熱や全身症状がある
・被せ物が外れた
・歯が大きく割れた

このような場合は、帰国まで何週間も待つのではなく、まず現地の歯科医院で状態を確認することをおすすめします。

特に腫れが急速に広がる、発熱を伴う、口が開きにくい、飲み込みにくいなどの症状がある場合は、感染が広がっている可能性もあるため早めの対応が必要です。

一方、症状が軽く、すぐに帰国予定がある場合などは、診査後に応急処置のみ行って日本で継続治療する選択肢もあります。

「帰国まで待てるかどうか」も診断してから判断することが大切です。

痛み止めや抗生物質だけで治りますか?

痛み止めによって一時的に症状が軽くなることはあります。

しかし、根管内の感染や歯の破折など原因そのものが残っている場合、痛み止めだけでは原因を解決できません。

また、歯の根の感染があるからといって、すべてのケースで抗菌薬が必要というわけでもありません。

根管内の感染が原因であれば、感染源に対する歯科治療が基本になります。

発熱、倦怠感、リンパ節腫脹、急速に広がる腫れなど全身的・拡大的な感染徴候がある場合には、歯科治療に加えて抗菌薬が必要になることがあります。

自己判断で抗菌薬だけを飲み続けるのではなく、原因を確認することが重要です。

以前の日本の歯科医院の資料は必要?

持っている場合は役立つことがあります。

例えば、

・以前撮影したレントゲン
・CT画像
・治療した時期
・どの歯を根管治療したか
・使用した被せ物の種類
・治療経過が分かる資料

などがあれば、現在の状態と比較できることがあります。

ただし、資料がなくても診察は可能です。

「何年前に日本で治療したか分からない」という場合でも、まず現在の状態を確認します。

ありが歯科では「以前の治療を否定する」のではなく、現在の状態を診断します

日本で治療した歯が数年後に痛くなったからといって、以前の治療が悪かったと単純に判断することはできません。

根管治療後の歯には、

新しい虫歯
被せ物の劣化・脱離
新たな亀裂
歯根破折
歯ぎしり・食いしばり
再感染

など、治療後に新しく起こる問題もあります。

また、歯の根管は非常に複雑な形態をしているため、治療後にも病変が残る場合があります。

ありが歯科では、以前の治療を評価することだけを目的にするのではなく、

「今、この歯に何が起きているのか」

を確認することを大切にしています。

そのうえで、再根管治療、被せ物の再治療、経過観察、外科的治療、抜歯などの選択肢がある場合には、それぞれについてご説明します。

他院で説明を受けたけれど「本当にこの治療でいいの?」と迷っている方へ

よくある質問

Q1. 神経を取った歯なのに、なぜ痛いのですか?

歯の内部の神経を取り除いても、歯の周囲には歯根膜や骨など感覚を持つ組織があります。

根の先に炎症が起きたり、歯根膜に強い力がかかったりすると、神経を取った歯でも痛みを感じることがあります。

Q2. 10年前に根管治療した歯でも再感染しますか?

可能性はあります。

根管治療済みの歯でも、新しい虫歯、被せ物の問題、歯の亀裂などによって後から細菌が侵入することがあります。

Q3. 噛むと痛いだけなら様子を見ても大丈夫ですか?

噛むと痛い原因には、根の先の炎症、クラック、噛み合わせなど複数の可能性があります。

症状が続く場合や悪化する場合は、早めに原因を確認することをおすすめします。

Q4. 根の先に黒い影があると必ず再治療が必要ですか?

画像だけで一律に判断するものではありません。

病変の大きさや変化、症状、以前の治療状態、歯の保存可能性などを総合して判断します。

Q5. 再根管治療をすれば必ず治りますか?

どの治療にも100%の保証はありません。

歯の状態、根管形態、感染の程度、歯根破折の有無、修復可能性などによって予後は異なります。

Q6. 根管治療した歯は抜いた方が早いですか?

抜歯が必要な症例もありますが、再根管治療などによって保存できる可能性がある歯もあります。

まず保存可能性を確認してから治療方法を検討します。

Q7. 日本に帰国するまで応急処置だけできますか?

症例によって可能です。

帰国予定日、症状、感染の程度などを確認し、応急処置で待てるのか、ホーチミンで治療を開始した方がよいのかを判断します。

Q8. 日本で治療した歯でもありが歯科で診てもらえますか?

はい。

以前どこで治療したかにかかわらず、現在の症状や歯の状態を確認します。以前のレントゲンなどがある場合は、可能であればお持ちください。

まとめ|「神経を取った歯だから痛くならない」わけではありません

日本で何年も前に治療した歯が、ホーチミンで突然痛くなることはあります。

原因として、

根の先の炎症
根管内の再感染
未処置の根管
被せ物・詰め物の問題
新しい虫歯
歯の亀裂・歯根破折
噛み合わせ・歯ぎしり

などが考えられます。

そして重要なのは、

「日本で治療した歯だから日本に帰るまで待つ」

と決めてしまわないことです。

緊急性が低ければ帰国後に治療できる場合もありますが、感染や破折などでは早めに処置した方がよいケースもあります。

ホーチミンのありが歯科では、日本で治療した歯についても現在の状態を確認し、ホーチミンで治療するのか、日本への帰国まで待てるのかも含めて治療方法をご説明します。


参考文献

[1] Nair PNR.
On the causes of persistent apical periodontitis: a review.
International Endodontic Journal. 2006;39(4):249-281.
doi:10.1111/j.1365-2591.2006.01099.x.

[2] European Society of Endodontology.
Quality guidelines for endodontic treatment: consensus report of the European Society of Endodontology.
International Endodontic Journal. 2006;39:921-930.

[3] Duncan HF, et al.
Treatment of pulpal and apical disease: The European Society of Endodontology (ESE) S3-level clinical practice guideline.
International Endodontic Journal. 2023.

[4] American Association of Endodontists.
Endodontic Retreatment.
根管治療後に数か月〜数年経過してから症状が生じる原因、再根管治療についての患者向け資料。


「ありが歯科の各治療についてはこちらをご参考にしてみてください。」

執筆・監修歯科医 ありが歯科院長 有賀智哉

日本人歯科医師として、ホーチミン旧1区にて日本品質の歯科治療を提供。
一般歯科・小児矯正・インプラント・ホワイトニングまで幅広く対応しています。

日本語対応で安心してご相談いただけます。

関連記事