ADC NEWS

「歯石取りをしたのに、まだ歯周病の治療が必要と言われた」

「歯茎の奥まで掃除すると言われたけれど、普通のクリーニングと何が違うの?」

「SRPという治療は痛い?何回も通わなければいけない?」

歯科医院で歯周病の治療を勧められ、このような疑問を持つ方は少なくありません。

歯石取りは歯周病治療の重要な処置ですが、歯周病が進行している場合、歯茎の上に見える歯石を取り除くだけでは十分でないことがあります。

その理由は、歯周病の原因となる細菌の集まり(バイオフィルム)や歯石が、歯茎の奥の歯根表面にも存在するからです。

この歯茎の奥の汚れを除去する治療が、SRP(スケーリング・ルートプレーニング)です。

この記事では、ベトナム・ホーチミンのありが歯科が、SRPが必要な理由、通常の歯石取りとの違い、痛みや治療回数、治療後の注意点について、日本人歯科医師の立場からわかりやすく解説します。

結論|歯周病では歯茎の奥にある歯石や細菌まで除去する必要がある

歯周病によって歯周ポケットが形成され、歯茎の奥に歯石やバイオフィルムが付着している場合、表面の歯石取りだけでは炎症の原因を十分に取り除けないことがあります。

そのため、歯根表面に付着した歯石やバイオフィルムを除去するSRPが必要になります。

SRPには、歯周ポケット内の細菌量を減らし、歯茎の炎症や出血を改善し、歯周ポケットを浅くする効果が期待できます。

ただし、すべての歯にSRPが必要なわけではありません。また、SRPだけで進行した歯周病が必ず改善するわけでもありません。

歯周病検査で状態を確認し、適切な治療を選択することが重要です。

1.そもそも歯周病はなぜ起こる?

歯周病は、歯の表面に付着した細菌の集まりであるプラーク(歯垢)によって、歯茎に炎症が起こる病気です。

初期には歯茎の腫れや出血が中心ですが、歯周炎へ進行すると、歯を支える歯槽骨や歯根膜などの組織が破壊されます。

その結果、歯と歯茎の間に深い歯周ポケットが形成されることがあります。

歯周病の特徴は、初期から中等度では強い痛みを感じないことが多い点です。

「痛くないから大丈夫」と思っていても、歯周組織の破壊が進んでいる場合があります。

歯周病が進行すると起こること

  • 歯磨きで歯茎から血が出る
  • 歯茎が赤く腫れる
  • 口臭が気になる
  • 歯周ポケットが深くなる
  • 歯茎が下がる
  • 歯が揺れる
  • 噛みにくくなる

こうした症状がある場合には、歯科医院で歯周病検査を受けることをおすすめします。

歯周病の症状チェック!歯ぐきの出血・口臭の理由と治し方

2.普通の歯石取りとSRPは何が違う?

歯科医院で行う歯石取りには、歯茎より上の歯石を取り除く処置と、歯茎の下にある歯石やバイオフィルムを除去する処置があります。

患者さんにはどちらも「歯石取り」と説明されることがありますが、治療する場所や目的が異なります。

スケーリング(歯石取り)

歯の表面に付着した歯石やプラークを除去する処置です。

歯茎より上の歯石を除去することを「歯肉縁上スケーリング」といいます。

歯肉縁上の歯石は比較的確認しやすく、超音波スケーラーなどで取り除きます。

歯肉炎の改善や、歯周病予防のためにも重要な処置です。

なお、スケーリングという言葉自体は、歯肉縁下の歯石除去にも使われます。

SRP(スケーリング・ルートプレーニング)

SRPは、歯周ポケット内の歯根表面に付着した歯石やバイオフィルムを除去する非外科的な歯周病治療です。

専用の器具を使って歯茎の奥までアプローチします。

現在の歯周病治療では、単に歯根表面を削って滑らかにすることよりも、歯石やバイオフィルムを適切に除去し、健康な歯根組織をできるだけ保存することが重視されています。

通常のクリーニングとSRPの違い

比較項目一般的なクリーニングSRP
主な目的歯石・プラーク・着色の除去歯周ポケット内の感染源を減らす
主な対象歯茎より上の歯面など歯茎の下の歯根表面
対象となる人予防やメンテナンスを受ける方歯周炎が認められる方など
麻酔通常は不要なことが多い必要に応じて使用
治療回数状態による治療範囲や状態による
治療後定期的な予防管理再評価と継続的な歯周管理

※実際の歯周病治療では、クリーニングとSRPを完全に分離できるわけではありません。歯肉縁上・縁下の両方の清掃が重要です。

3.なぜ歯茎の奥まで歯石を取る必要があるの?

SRPが必要な理由を理解するには、歯周ポケットの中で何が起こっているかを知ることが大切です。

① 歯周ポケットの中にも細菌が存在する

歯周病が進行すると、歯と歯茎の間に深い歯周ポケットが形成されます。

この内部には、細菌の集まりであるバイオフィルムが存在します。

歯周ポケットが深くなると、患者さん自身の歯ブラシだけで内部を十分に清掃することは難しくなります。

そのため、歯科医院で専門的な器具を使って除去する必要があります。

② 歯石は細菌が付着しやすい場所になる

歯石はプラークが石灰化して硬くなったものです。

歯石自体が歯周病の唯一の原因というわけではありません。

しかし、歯石の表面にはバイオフィルムが付着しやすく、細菌を取り除きにくい環境を作ります。

特に歯周ポケットの中にある歯石は、患者さん自身では除去できません。

歯茎の上だけをきれいにしても、歯周ポケット内に感染源が残っていれば、炎症が続く場合があります。

③ 炎症が続くと歯を支える組織が破壊される

歯周病は、細菌に対する体の炎症反応によって歯周組織が破壊される病気です。

炎症が長期間続くと、歯を支える骨が失われ、歯の動揺や歯の喪失につながることがあります。

SRPは歯周ポケット内の感染源を減らし、炎症を改善させるために行います。

SRPの目的は、単に歯石をきれいに取ることではなく、歯周病の進行を抑え、歯を長く残すための環境を整えることです。

4.SRPをすると歯周病はどのくらい改善する?

SRPによって期待できる主な効果は、次の3つです。

歯茎の出血が減る

歯周ポケット内の細菌量が減り、炎症が改善すると、歯周病検査時の出血が減ることがあります。

歯周ポケットが浅くなる

炎症による歯茎の腫れが改善し、歯周組織の状態が安定すると、歯周ポケットが浅くなることがあります。

歯周病の進行を抑える

適切な歯周治療と継続的な管理によって、歯周組織の破壊が進行するリスクを減らすことが期待できます。

欧州歯周病学会連合(EFP)の歯周病治療ガイドラインでは、歯肉縁下の器械的清掃が、歯周ポケットの深さ、歯肉の炎症、病変部位の減少に有効であるとして推奨されています。

ただし、すでに失われた歯槽骨がSRPだけで元どおりになるわけではありません。

進行した歯周病では、追加の歯周外科治療などが必要になることもあります。

5.歯周ポケットが何mmならSRPが必要?

「歯周ポケットが4mmと言われたら、必ずSRPが必要ですか?」

患者さんからよくある質問です。

歯周ポケットの深さは、SRPの必要性を判断する重要な指標ですが、深さだけで治療を決めることはできません。

歯周ポケットの深さと判断の目安

歯周ポケット一般的な評価と対応
1〜3mm深さだけでは歯周炎とは判断しない。出血や歯周組織の状態も確認
4〜5mm出血、付着の喪失、歯石の有無などを評価し、SRPを検討
6mm以上深い歯周ポケットとして慎重に評価。SRP後も追加治療が必要な場合がある

※この表は患者さん向けの目安であり、診断基準やSRPの一律の適応基準ではありません。

例えば、4mmの歯周ポケットがあっても、歯茎の腫れによって一時的に深く測定されている場合があります。

一方、3mm程度でも歯肉退縮があり、歯周組織の付着が大きく失われている場合があります。

そのため、歯科医院では次の項目を総合的に確認します。

  • 歯周ポケットの深さ
  • プロービング時の出血
  • 歯石やプラークの付着
  • 歯肉退縮と臨床的アタッチメントレベル
  • レントゲンで確認する歯槽骨の状態
  • 歯の動揺や根分岐部病変

「4mmだから必ずSRP」「3mmだから歯周病ではない」という単純な判断はできません。

6.SRPは痛い?麻酔は必要?

SRPと聞いて、痛みを心配される方もいるでしょう。

歯周ポケットの深さや歯石の付着状態によっては、治療中に痛みや不快感が生じることがあります。

特に、歯根表面が露出している場合や、歯茎に強い炎症がある場合は、刺激を感じやすくなることがあります。

そのため、必要に応じて局所麻酔を使用します。

麻酔を使うことで、治療中の痛みを抑えながら処置を進めることができます。

治療後に起こることがある症状

SRP後には、次のような症状が一時的に生じることがあります。

  • 歯茎の軽い痛みや違和感
  • 歯磨き時の出血
  • 冷たいものがしみる
  • 歯茎が下がったように見える
  • 歯と歯の隙間が広がったように感じる

特に、炎症によって腫れていた歯茎が引き締まると、以前より歯根が露出し、歯が長く見える場合があります。

これは必ずしも治療によって歯周病が悪化したことを意味しません。

ただし、強い痛みや腫れが続く場合、発熱や膿が出る場合などは、治療を受けた歯科医院に相談してください。

7.SRPは何回通う必要がある?

SRPの治療回数は、歯周病の進行度や治療する歯の本数によって異なります。

例えば、一部の歯だけに深い歯周ポケットがある場合と、口の中全体に歯周病が広がっている場合では、必要な処置の範囲が違います。

歯周病の状態や患者さんの体調によっては、口の中を複数のブロックに分けて治療することがあります。

一方、条件が整えば、短期間に広い範囲の処置を行う方法もあります。

SRPは必ず6回必要、あるいは1回で終わる、と決まっているわけではありません。

治療範囲、麻酔の必要性、歯石の付着量、患者さんの希望などを考慮して計画します。

8.SRPが終わったら歯周病治療は終了?

SRPが終わっても、歯周病治療が完全に終了したとは限りません。

重要なのが、治療後の再評価です。

再評価では何を確認する?

SRP後、歯周組織が落ち着いた時期に、改めて歯周病検査を行います。

確認するのは、主に次の項目です。

  • 歯周ポケットが浅くなったか
  • 歯茎の出血が減ったか
  • プラークコントロールが改善しているか
  • 深い歯周ポケットが残っていないか
  • 歯の動揺などに変化がないか

歯周病の状態が安定していれば、継続的な歯周管理へ移行します。

一方、深い歯周ポケットや出血が残っている場合は、追加の非外科的治療や歯周外科治療を検討することがあります。

EFPのガイドラインでは、治療後に出血を伴う5mm以上の歯周ポケットや、6mm以上の深い歯周ポケットが残っていないことなどを、治療評価の目標としています。

ただし、すべての患者さんで同じ結果が得られるわけではありません。

定期的なメンテナンスが必要な理由

歯周病は、治療によって状態が改善しても、その後の清掃状態や生活習慣などによって再発・進行する可能性があります。

そのため、歯周病治療後も継続的な管理が必要です。

メンテナンスの間隔は、歯周病の重症度、残存する歯周ポケット、喫煙、糖尿病などのリスク因子を考慮して決めます。

歯の定期検診を受けてこなかったBさんと定期検診を受けてきたAさんの話

9.SRPを受ければ、自宅の歯磨きは普通でいい?

SRPは歯科医院で行う専門的な処置ですが、歯周病治療の成功には、患者さん自身の毎日の清掃が欠かせません。

歯周ポケット内の歯石やバイオフィルムを除去しても、歯の表面には再びプラークが形成されます。

そのため、毎日の歯磨きや歯間清掃が不十分だと、炎症が再発する可能性があります。

自宅で気をつけたいこと

歯ブラシだけでなく、歯間部も清掃する

歯と歯の間は、歯ブラシだけでは十分に清掃できないことがあります。

フロスや歯間ブラシなどを、歯の状態に応じて使用しましょう。

歯ブラシだけでは汚れの6割しか落ちない?フロス・歯間ブラシで変わる歯垢除去率

歯茎から出血する場所を放置しない

歯磨きで出血する場合、歯肉の炎症が関係していることがあります。

ただし、強い力で磨くと歯茎を傷つけることもあるため、適切な清掃方法を確認することが大切です。

喫煙や糖尿病などのリスク因子にも注意する

喫煙や血糖コントロールの不良は、歯周病の進行や治療結果に影響することがあります。

歯周病治療は、歯石取りだけで完結するものではありません。

ホーチミンで糖尿病と歯周病が気になる方へ

10.ホーチミンで歯周病治療を受ける日本人の方へ

ベトナム・ホーチミンで生活している日本人の方の中には、歯科医院でクリーニングを受けていても、詳しい歯周病検査を受けたことがない方もいるかもしれません。

「定期的に歯石を取っているから歯周病は大丈夫」

そう思っていても、歯茎の奥に歯周ポケットや歯石が存在する場合があります。

大切なのは、クリーニングを受けているかどうかだけでなく、歯周ポケットや歯を支える骨の状態を確認しているかという点です。

ありが歯科では、日本人歯科医師による診察と、日本の歯科衛生士によるクリーニングを行っています。

歯周病が疑われる場合には、歯周組織の状態を確認し、必要な治療について日本語でご説明します。

ホーチミンで歯周病や歯石取りについて不安がある方は、歯科医院で検査を受け、現在の状態を確認することが重要です。

11.よくある質問(FAQ)

Q1.普通の歯石取りだけでは歯周病は治らないのですか?

歯肉炎や軽度の炎症では、歯肉縁上の清掃と適切な歯磨きによって改善する場合があります。しかし、歯周炎が進行し、歯周ポケット内に歯石やバイオフィルムが存在する場合は、歯肉縁下の清掃が必要になることがあります。

Q2.SRPは必ず受けなければいけませんか?

すべての方に必要な処置ではありません。歯周病検査の結果から、歯肉縁下の歯石やバイオフィルムを除去する必要がある部位に対して行います。

Q3.SRPは痛いですか?

歯周ポケットの深さや炎症の程度によっては痛みを感じることがあります。必要に応じて局所麻酔を使用し、痛みを抑えながら治療します。

Q4.SRPをすると歯茎が下がりますか?

炎症による腫れが改善すると、歯茎が引き締まり、以前より歯が長く見えることがあります。また、歯周組織の状態によっては歯肉退縮が目立つ場合があります。

Q5.SRPをすれば歯周病は完治しますか?

SRPによって炎症や歯周ポケットが改善することはありますが、失われた歯周組織が必ず元に戻るわけではありません。治療後の再評価と継続的な管理が必要です。

Q6.歯周ポケットが4mmならSRPが必要ですか?

4mmという深さだけでは判断できません。出血、歯石の有無、歯槽骨の状態、アタッチメントロスなどを総合的に評価します。

Q7.SRPをした後も定期的に歯石取りが必要ですか?

はい。歯周病の状態が安定した後も、再発や進行を防ぐために、定期的な歯周管理が重要です。必要な処置や通院間隔は患者さんの状態によって異なります。

Q8.歯周病は痛くなくてもSRPが必要になることがありますか?

あります。歯周病は自覚症状が少ないまま進行する場合があります。痛みがなくても、歯周ポケット内に歯石やバイオフィルムが存在し、歯周炎が認められる場合はSRPを検討します。

まとめ|SRPは歯周病の原因を歯茎の奥から取り除く治療

歯周病治療では、歯の表面をきれいにするだけでなく、歯周ポケットの中にある歯石やバイオフィルムを除去することが重要です。

SRPは、歯周ポケット内の感染源を減らし、歯茎の炎症や出血を改善させるための基本的な治療です。

今回のポイントは3つです。

① 歯茎の上の歯石取りだけでは、進行した歯周病に十分対応できない場合がある。

② SRPは歯周ポケット内の歯石やバイオフィルムを除去するために行う。

③ SRP後は再評価と定期的な歯周管理が重要。

歯石取りを受けているのに歯茎から出血する、歯周ポケットが深いと言われた、歯周病の治療が必要と言われた方は、まず現在の歯周組織の状態を確認しましょう。

ベトナム・ホーチミンで歯周病治療についてお悩みの方は、ありが歯科へご相談ください。


参考文献

  1. 日本歯周病学会『歯周治療のガイドライン2022』
    https://www.perio.jp/publication/guideline.shtml
  2. 日本歯科医学会『歯周病の治療に関する基本的な考え方』2026年3月
    https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r08/document-260420.pdf
  3. Sanz M, et al. Treatment of stage I–III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline. Journal of Clinical Periodontology. 2020;47(Suppl 22):4–60.
    https://doi.org/10.1111/jcpe.13290
  4. American Dental Association. Nonsurgical Treatment of Chronic Periodontitis Clinical Practice Guideline. 2015.
    https://www.ada.org/resources/research/science/evidence-based-dental-research/nonsurgical-treatment-of-periodontitis-guideline
  5. American Academy of Periodontology. Non-Surgical Treatments.
    https://www.perio.org/for-patients/periodontal-treatments-and-procedures/non-surgical-treatments/

執筆・監修歯科医 ありが歯科院長 有賀智哉

日本人歯科医師として、ホーチミン旧1区にて日本品質の歯科治療を提供。
一般歯科・小児矯正・インプラント・ホワイトニングまで幅広く対応しています。

日本語対応で安心してご相談いただけます。