「食事のときだけ奥歯が痛い」
「歯医者で虫歯はないと言われたのに、噛むと痛む」
このような症状は、虫歯以外の原因でも起こります。
噛んだときの歯の痛みには、歯のひび・歯根破折、噛み合わせによる負担、歯周病、歯の根の先の炎症などが関係していることがあります。
特に重要なのは、痛みのある歯を見つけるだけでなく、なぜその歯が痛むのかを見極めることです。
ホーチミンのありが歯科では、日本人歯科医師が症状や歯の状態を確認し、必要な検査を組み合わせながら治療方針を検討しています。

1. 虫歯がないのに噛むと痛い、主な4つの原因
① 歯にひびが入っている(クラック・歯根破折)
歯に細いひびが入っていると、噛む力によってひびの周囲がわずかに動き、痛みが生じることがあります。
特徴的なのは、硬いものを噛んだときだけ痛む、あるいは噛んだ力を抜いた瞬間に鋭い痛みが出る症状です。
ひびが小さい段階では、通常のレントゲン写真に写らないこともあります。
米国歯内療法学会(AAE)も、歯のひびでは噛むときや噛む力を緩めるときの痛み、冷たいものへの反応などがみられると説明しています。【文献①】
なお、歯の頭の部分に入るひび(クラック)と、歯根に生じる破折(歯根破折)は、同じものではありません。
ひびの位置や深さによって、歯を保存できる可能性や治療方法が変わります。
② 噛み合わせによる負担(咬合性外傷)
虫歯がなくても、特定の歯に過剰な力がかかることで、歯を支える歯根膜や周囲の組織に負担が生じる場合があります。
例えば、次のような状況では噛み合わせの確認が必要です。
- 被せ物や詰め物を入れてから噛むと痛くなった
- 歯ぎしりや食いしばりがある
- 特定の歯だけ強く当たる感じがする
ただし、噛むと痛いからといって、すべてが噛み合わせの問題とは限りません。
2017年の国際歯周病分類に関するコンセンサス報告では、外傷性咬合力は咀嚼時の痛みや歯の動揺などに関連する一方、咬合性外傷そのものが歯周組織の付着喪失を引き起こすというヒトでの証拠はないとされています。【文献②】
噛み合わせの調整だけで対応する前に、破折や歯髄・歯周組織の病変を除外することが重要です。
③ 歯周病による歯の支持組織の炎症
歯周病が進行すると、歯ぐきだけでなく、歯を支える骨や歯周組織にも影響が及びます。
歯ぐきの腫れ、出血、歯の動揺などを伴う場合は、歯周病が痛みに関係している可能性があります。
歯周病の診断では、歯周ポケットの深さだけでなく、出血の有無、歯周組織の付着状態、レントゲンによる骨吸収などを総合的に評価します。【文献③】
また、歯周病によって歯の支持が弱くなっている場合、噛む力による負担が症状に関係することもあります。
④ 歯の根の先の炎症(根尖性歯周炎)
歯の神経が壊死した場合や、過去に根管治療を受けた歯では、歯根の先に炎症が起こることがあります。
この場合、歯の表面に虫歯が見えなくても、噛んだときや歯を軽くたたいたときに痛むことがあります。
診断には、冷温刺激への反応、打診、レントゲン検査などを組み合わせます。【文献④】
2. 症状から考える原因の違い
| 症状の特徴 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 噛んだ瞬間や力を抜いたときに鋭く痛む | 歯のひび・破折 |
| 特定の歯が強く当たり、噛むと違和感がある | 咬合による負担 |
| 歯ぐきの腫れ・出血・歯の揺れがある | 歯周病 |
| 噛むと響く、歯をたたくと痛い | 根尖性歯周炎など |
※ 症状は重なることがあり、この表だけで病名を確定することはできません。
3. 歯科医師はどのように原因を見分けるのか
噛んだときの痛みは、ひとつの検査だけで診断できるとは限りません。
歯科医院では、主に次の検査を組み合わせます。
噛み合わせの検査
どの歯に力がかかっているか、特定の位置で痛みが再現されるかを確認します。
咬合痛・打診の検査
歯を噛みしめたときや軽くたたいたときの反応を調べ、痛みの出方を比較します。
歯周ポケット検査
歯の周囲を調べ、歯周病による炎症や、局所的に深いポケットがないか確認します。限局した深いポケットは歯根破折を疑う所見の一つですが、それだけで確定診断はできません。
歯髄検査・レントゲン検査
冷温刺激への反応や歯根周囲の状態を確認します。
必要に応じて歯科用CT(CBCT)を検討する場合もありますが、CTですべてのひびが確認できるわけではありません。
特に歯根破折の診断では、破折の状態や根管内の金属などによってCTの診断精度が変わることが報告されています。【文献⑤】
4. 痛みがある歯は、すぐに削った方がよい?
原因が分からない段階で、歯を削ることや神経を取ることが最適とは限りません。
例えば、歯のひびが原因であれば、ひびの深さや歯髄の状態によって治療方針が変わります。
一方、噛み合わせの負担が疑われる場合でも、十分な検査をせずに歯を削って調整することは避けたいところです。
大切なのは、症状の原因を可能な限り絞り込み、必要な治療を選択することです。
診断が難しい場合には、経過を確認したり、追加検査や専門医への紹介を検討したりすることもあります。
5. ホーチミンで噛むと歯が痛い場合は
ホーチミンで生活している日本人の方からも、歯の痛みや噛み合わせに関するご相談があります。
痛みが続いている場合は、硬いものを無理に噛まず、早めに歯科医院で原因を確認しましょう。
特に、腫れが強い、痛みが悪化している、発熱を伴う場合には早めの受診が必要です。呼吸や飲み込みが難しい場合は、救急医療機関を受診してください。
ありが歯科では、症状や検査結果を日本語で説明し、治療方法をご相談いただけます。

よくある質問
Q. レントゲンで異常がなくても歯根破折の可能性はありますか?
あります。小さなひびや初期の破折は、通常のレントゲン写真では確認できない場合があります。症状や歯周ポケットの状態なども含めて診断します。
Q. 噛むと痛い歯は、放置すると治りますか?
一時的に症状が軽くなる場合もありますが、破折や感染が原因の場合は進行する可能性があります。痛みが続く場合は歯科医院での確認をおすすめします。
Q. 歯ぎしりが原因ならマウスピースで治りますか?
ナイトガードは歯への負担を管理するための選択肢ですが、すべての咬合痛に有効とは限りません。歯の破折や炎症がないか確認することが先決です。
まとめ
虫歯がないのに噛むと歯が痛い場合、歯のひび・歯根破折、噛み合わせの負担、歯周病、根尖性歯周炎などを考える必要があります。
重要なのは、痛みだけを取り除こうとするのではなく、原因を正しく見極めることです。
歯の状態によっては複数の原因が重なっていることもあります。症状が続く場合は、適切な検査を受けましょう。
参考文献・エビデンス
【文献①】 American Association of Endodontists. Cracked Teeth.
https://www.aae.org/patients/dental-symptoms/cracked-teeth/
【文献②】 Jepsen S, et al. Periodontal manifestations of systemic diseases and developmental and acquired conditions: Consensus report of workgroup 3 of the 2017 World Workshop. Journal of Periodontology. 2018.
https://doi.org/10.1002/JPER.17-0733
【文献③】 Papapanou PN, et al. Periodontitis: Consensus report of workgroup 2 of the 2017 World Workshop. Journal of Clinical Periodontology. 2018.
https://doi.org/10.1111/jcpe.12946
【文献④】 American Association of Endodontists. Endodontic Diagnosis — Colleagues for Excellence. 2013.
https://www.aae.org/specialty/newsletter/endodontic-diagnosis/
【文献⑤】 de Lima Dias-Junior LC, et al. Exploring Diagnostic Reliability of CBCT for Vertical Root Fractures: A Systematic Review and Meta-Analytical Approach. International Journal of Dentistry. 2025.
https://doi.org/10.1155/ijod/8824867
※ 本記事は歯科医学の文献に基づく一般的な情報提供を目的としており、個別の診断に代わるものではありません。
執筆・監修歯科医 ありが歯科院長 有賀智哉
日本人歯科医師として、ホーチミン旧1区にて日本品質の歯科治療を提供。
一般歯科・小児矯正・インプラント・ホワイトニングまで幅広く対応しています。
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