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歯を少しだけ削り、その上から薄いセラミックを接着するラミネートべニアという治療法。ホーチミンのありが歯科のラミネートべニアは歯を0.3から0.7ミリほど削り、日本人、ベトナム人を含むモンゴロイドを中心とした歯の切削量で行います。この代表的な論文を中心としたセミナーをベトナムでも開催しておりました。このセミナーでは有賀がホーチミン、ハノイなどで500名以上のベトナム歯科医師が参加されました。

ラミネートべニアの適応症としては

  • 変色歯(テトラサイクリン)
  • 正中離開、空隙歯列(歯と歯に隙間がある)
  • 矮小歯(小さい歯)
  • 先端が欠けた歯
  • 前歯の歯列不正(わずかに位置がずれていたり捻転している歯)
  • 表面に凹凸のある歯
  • 形の不良な歯
  • ホワイトニングでも歯の白さに満足していない       となります。

ラミネートベニアの耐久性は、歯科医師の歯の形成技術も大きく関係します。歯の形成が象牙質にいかないよう繊細な形成が必要になり、70%以内でエナメル質に接着するのが大原則の治療方法です。エナメル質にきちんと接着すれば最も高い接着力を維持できます。

歯の形によっては本当にうっすらとしか形成しない例もありますので、ラミネートベニアは必要最小限の歯を残しながら審美的にキレイにできる前歯治療の最たる治療方法といえます。

ラミネートべニアはとてもむつかしく歯を削る量は少ないのですが歯を削る面積が多いため、治療時には時間がかかることもあります。患者様の歯にやさしく5倍速コントラアングルを使って歯にやさしい治療で進めていきます。

通常歯科で使うタービンは1分間に30万回転の回転数で歯を削りますが、コントラは分速1万回転程度です。切削時の熱が少ないため歯へのダメージを最小限に食い止めることが出来ます。削るときの歯への発熱は歯の神経(歯髄)にダメージを与えたり、象牙質に熱傷を与え歯の強度が弱まることが考えられています。この点で5倍速コントラアングルは音も静かで発熱量も少なく患者様の歯にとっては優しいことになります。

ヒエン様 26歳

主訴 歯をきれいにしたい。

治療前 診断

全体的に歯に色がついており、右上中切歯はコンポジットレジンで継ぎはぎされたような感じがある。金属のポストを維持としてコンポジットレジンを支えている。歯の神経はすでに死んでおり、残された歯の面積も多くない感じがみられる。左上側切歯は矮小歯となっており、少し小さな歯で先端も尖っている。歯石や歯肉炎も見られ、歯磨きの不足となっている。歯頚部の歯石が歯の色を曇らせ全体の色も悪く見える。歯肉炎がひどく歯の形態を悪く見せている。歯医者にかかるのは10年ぶりだという。

スマイル時、歯の正中はほぼあっているもののガミースマイルのためか下唇と歯列の関係はあまりよくない。

横顔からコンベックスタイプで下唇はややE-LINEから外れている。

歯の縦横比TOOTH RATIOの関係が悪く、歯自体は短く横長に見える。治療時の診断用ワックスアップを参考に縦横比を整える必要がある。

歯のカウンターは正常でかみ合わせにも大きな問題はなく犬歯誘導または側切歯を含む咬合となっている。

歯ぐきの高さは不均一で歯肉のスキャロップもばらばらで整っていない。

治療計画

そこで治療計画として前歯の形を整える、歯のテクスチャーをきれいにする、歯の色をきれいにするためにラミネートべニアとジルコニアクラウンを使用することにした。歯ブラシ指導も行い歯石除去をして歯肉の治療を行う。

ジルコニアクラウンは今までの高強度のセラミックス材料の代わりにジルコニアという色調および光透過性をより一層天然歯に近づけた高強度のジルコニアオールセラミッククラウンが臨床応用されるようになっています。

最近のオールセラミックシステムとして、CAD/CAM(コンピューターによる修復物の設計や加工)を用いたジルコニアが主流となっています。ジルコニアは、人工ダイヤモンドともいわれ、従来のセラミックスの5~6倍の高い曲げ強度と破壊靭性値(粘り強さ)を有しております。

このような治療計画のもと治療を進めていきます。

まずは資料取りを行った後、全体のバランスと咬合を見るためにワックスアップを行い、歯の黄金比を使って歯を配列した。

その後、モックアップを作成して患者様にモックアップを着用して実際に見てもらった。

*モックアップとは術前シミュレーションに用いる仮歯です。日本ではあまり馴染みがありませんが、欧米では仮歯を使ったシミュレーションが行われるのが一般的です。モックアップを使ったシミュレーションを行うことで、患者様のイメージも正確なものになります。モックアップは術前シミュレーションのみに使われます。今回の場合は歯には接着しないでモックアップを見せて患者様にイメージしてもらってます。

歯を並べる際に基準が必要で黄金比を使って標準的な歯の長さや指標通りにワックスアップしたプラン1と現在の歯の長さを参考にして歯を並べる方法のプラン2の2つのパターンが考えられた。

黄金比とは

黄金比とは、近似値1:1.618、約5:8の安定的で美しい比率とされる貴金属比の一つです。古代ギリシア以来「神の比」とも呼ばれる。

黄金比を使った 身近なものとしては名刺をはじめとした様々なカード類、郵便はがきを挙げることができます。この黄金比は自然界にも多く存在しており、松ぼっくりのかさ、花びらの数、葉の生え方においても黄金比を発見できます。

黄金比を使った代表的な例として、ミロのヴィーナス、パルテノン神殿、名刺、ハガキ、Appleのロゴ、デジタルカメラ、サグラダ・ファミリアなどがあります。

歯にも当てはまる黄金比

こ歯にも顔にも当てはまり、下唇の厚み:上唇の厚み=1.618:1、両目の眼球間の距離:一方の眼球の幅=1.618:1、上顎左右中切歯(上の歯の真ん中の)2歯の全幅:歯冠長(歯の長さ)=1.618:1 など挙げられこれを参考にして歯を作成します。

プラン1

プラン2

プラン1は歯が長く見えて下唇との関係が良いが、顔に対して歯が大きく見えてしまう。一方、プラン2は歯が短く見えてしまい平坦な歯列となっている。ベトナム人は歯が長く見える方が好きな方が多く、よく見かけるのは真四角で専門的には歯の形態としてはおかしい形の歯が好まれる。

このモックアップを患者様本人に見てもらったところプラン1を選択した。この時点では歯の治療は何もしておらず、何も歯を削っていない状態で治療計画を立てている段階です。

まず、右上の歯の根幹治療をしてファイバーコアポストを装着し仮形成をしてプロビジョナルレストレーション(仮の歯)を装着します。ブラッシング指導をしたため、患者様の頑張りもあって歯ぐきの炎症が収まってきています。

その後歯の削除量を正確に測るためにモックアップの上からラミネートべニアの形成をします。このモックアップの上から歯を削ることで最小限のラミネートべニアの形成ができ、エナメル質を多く残すことができます。エナメル質が多く残ることで歯を多く残すことができ、ラミネートべニアの接着がより確実なものとなります。

歯肉をしっかり圧排して形成ラインを整えて研磨します。

ワックスアップからシリコンコアを作り出し、そこから仮の歯を作ります。

先ほど形成を終えたので歯の型を取り、ラミネートべニアとジルコニアクラウンを作成します。

Final Result

Before Treatment

After Treatment

総評

やや歯は長く見えるが、歯ぐきラインも整い自然な歯の色、テクスチャーの問題も解決された。これは治療前にワックスアップ、モックアップで入念に診査、診断してからの治療に入って計画通りに治療が進んだため達成できた。